(1)相続財産とは

相続財産とは、亡くなった人の遺した財産的な権利義務の全てをいいます。
相続が開始されると、被相続人に帰属していた一切の権利義務が相続人にそのまま受け継がれます。
この権利義務のことを相続財産といいます。一般的には遺産と呼ばれるかもしれません。遺産というと、物など形のある財産というイメージかもしれませんが、相続財産は形のある財産に限られるわけではありません。

(2)相続財産に含まれる具体例
プラスの財産 マイナスの財産
現金・預貯金 有価証券・売掛金・貸付金・未収入地代・家賃など 借金 借入金・買掛金・手形債務・振出小切手などの支払い債務
不動産(土地・建物) 宅地・居宅・農地・店舗・貸地など 公租公課 未払いの所得税・住民税・固定資産税など
不動産上の権利 借地権・地上権・定期借地権など
小切手・株券・国債・社債など
保証債務 未払い費用・未払い利息・未払いの医療費など
動産 車・家財・骨董品・宝石・貴金属など その他 預かり敷金・保証金など
その他 株式・ゴルフ会員権・著作権・特許権など

※公租公課とは…国や地方公共団体に収める負担の総称のことをいいます。

(3)相続財産の評価

現金・預貯金は、被相続人(亡くなられた方)が亡くなった日(相続発生日)の額を相続財産に含めます。
預貯金は、通帳などに記帳をすることでその日の残高がわかりますが、現金などは、自己申告になります。
例えば、亡くなる数日前に多額の額を銀行から引き出した場合、その日までに被相続人のために使ったということを証明できるように領収書などを保管されて、残額を手許現金として申告しましょう。

土地は、路線価という評価方法で評価します。
この路線価は、国税庁のホームページ等で知ることができます。

http://www.rosenka.nta.go.jp/

毎年、7月にその年度の路線価が発表されます。
その年の1月1日から12月31日までに亡くなった方が保有する土地の評価は、その年の路線価を利用します。
ここで調べた路線価にその土地の広さを乗じることで土地評価の概算額がわかります。
実際に申告する際には、ここから土地の形や間口奥行の比率、周りの環境等から様々な補正が入り評価額を計算することになります。

建物は、固定資産税評価額で評価します。
毎年、5月前後に各市区町村役場から固定資産税の納付書が届きますが、そちらに明細票が添付されています。それで評価額がわかります。
年に1回の連絡なので、急ぎたい場合や無くしてしまった場合は、市区町村役場または都税事務所で、固定資産税評価証明書を発行してもらえれば、そちらで確認することもできます。

上場株式(金融商品取引所に上場されている株式)の評価は、被相続人の相続発生日の時価(最終価格)によって評価します。
ただし、この価格が、次の三つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します。
   1 相続発生日の月の毎日の最終価格の平均額
   2 相続発生日の月の前月の毎日の最終価格の平均額
   3 相続発生日の月の前々月の毎日の最終価格の平均額
その他、一定の場合には、修正が入ります。
取引相場の無い株式の評価等は、とても煩雑ですので、専門家に依頼することをお勧めします。

家財・・・一般的には、自宅の規模などに応じて家財一式●●円という形で評価します。
骨董品等・・・明らかに価値のあるものは、鑑定などをとりましょう。
生命保険・・・生命保険は、民法上相続財産では有りませんが、税法上はみなし相続財産
       となります。遺産分割をする際には、含めなくて良いですが、申告をする
       際には、こちらも含めて計算しましょう。
他人名義財産・・・他人名義の財産であっても、実質的に被相続人の財産である場合は、
       こちらも含めましょう。税務調査では、一番指摘が多い項目なので、注意
       が必要です。

プラスの財産を積み上げたら、そこからマイナスの財産を差し引いていきます。
こちらは、証憑(領収書や契約書など)により確実に差し引ける支払いであるか確認が必要ですので、しっかり保管しておきましょう。
その際、迷うものが多く有ります。その支払いが被相続人に帰属するものなのか、相続人(相続を受ける人)に帰属するものなのか、個別に専門家に問い合わせるのが良いでしょう。
例えば、葬儀費用は、お通夜やお葬式費用までは控除できますが、初七日や四十九日の費用は控除できません。また、お香典返しも控除できません。
また、借金(ローン等)は、控除できますが、他の方の借金の連帯保証額などは、控除できません。

さて、相続財産額が計算できましたか?