前回の記事で「家族信託」に関する必要な基礎知識をご説明いたしました。
家族信託(民事信託)を知ろう~基礎知識編~
民事信託が注目されるようになった理由のひとつは、高齢化社会と認知症の大幅な増加です。平均余命が年々伸びるにしたがって、資産の適切な管理が困難となる世帯が増加している現状です。
また、認知症が社会問題化し、今は健康な人でも、将来の発症に備えて対策を講じておく必要が痛感されています。

そうすると、判断能力のある時点から,将来の資産の管理のことを考えておく必要があります。いまや「相続対策」の前に「認知症対策」をしなければならない時代となりました。
今回は、「家族信託」の手続き、事例など踏まえて有効な「家族信託」の使い方、費用など具体的にご説明します。

1.家族信託(民事信託)の使い方

家族信託の有効性について、具体的にはどのような場合に「家族信託」が、有効に使えるのでしょうか。
以下のような状況下にある場合、この制度を考えてみることをお勧めしています。

① 将来、親などが高齢となり、判断能力の低下で、親名義の財産管理や処分に関しての心配がある。
② 相続で揉めそうなので遺言書を遺した方が良いと思っているが、気の進まない親がいる。
③ 障害などを持つ子を抱えていて、将来その子に相続した後の財産管理が心配である。
④ 独身や配偶者の死亡により一人暮らしで、老後の財産管理等に不安がある。
⑤ その他のケースで、財産等の管理に心配がある。

家族信託を行う場合、手続きは次の3つあります。

(1)委託者と受託者の信託契約

一般的なケースで、最も簡単に家族信託が始められる方法です。
委託者と受託者で内容を決定し、契約書を作成することで信託契約が成立します。
その後、受託者による財産管理のスタートとなります。
契約書はご自身で作成することも可能ですが、各家族によって置かれた状況や解決すべき問題が異なること、あるいは不備があると契約全体が無効になったり、契約の履行が不可能に陥ったりすることから、できるだけ専門家に相談することをお勧めします。

(2)委託者の遺言によるもの

自筆証書遺言または公正証書遺言で信託する旨を定めれば、委託者が死亡した時に信託契約が成立します。
信託宣言は公正証書など確定日付のある書面で、遺言は民法に定められた方式に従い作成する必要があります。

(3)委託者兼受託者が行う信託宣言(自己信託宣言)

受託者に適当な人がいないなどの理由で受託者がいなくても委託者自身が受託者として、信託宣言を行う方法です。
一定の目的で資産を運用・管理する時に用いられます。
例えば、障害のある子どもがいた場合に、子どもに残す資産を親の資産と分離して管理だけは親が行い、あくまで受益者は子どもという場合などに利用されます。
信託宣言は確定日付のある書面で行う必要があるため、公証役場での公正証書が必要となります。
これらの手続きは、必要に応じて、専門家のアドバイスを受けながら行うとリスクが軽減されますので家族信託を得意とする専門家に相談するとよいでしょう。

そもそも家族信託は、基本的にお金がかかるものではありませんが、親しいご家族の間であっても確実なものとして実行していく為に、以下のような準備をしておくことも大切です。

(1)公正証書の作成

① 信託契約書を公証役場で公正証書にする  → 確定日付の場合は1通当たり700円
② 公証役場への手数料として、以下の実費がかかってきます。※日本公証人連合会の公表している料金表になります。

契約や法律行為に係る証書作成の手数料は、原則として、その目的価額により定められています(手数料令9条)。
目的価額というのは、その行為によって得られる一方の利益、相手からみれば、その行為により負担する不利益ないし義務を金銭で評価したもので、目的価額は、公証人が証書の作成に着手した時を基準として公証役場で算定しています。
詳しくは、最寄の公証役場へご連絡してみるとよいでしょう。⇒手数料(日本公証人連合会)

【法律行為に係る証書作成の手数料】

目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 1万1,000円
500万円を超え1,000万円以下 1万7,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 2万3,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 2万9,000円
5,000万円を超え1億円以下 4万3,000円
1億円超3億円以下の部分 4万3,000円に5,000万円までごとに1万3,000円を加算
3億円超10億円以下の部分 9万5,000円に5000万円までごとに1万1,000円を加算
10億円超の部分 24万9,000円に5000万円までごとに8000円を加算

・贈与契約のように、当事者の一方だけが義務を負う場合は、その価額が目的価額になりますが、交換契約のように、双方が義務を負う場合は、双方が負担する価額の合計額が目的価額となります。

・数個の法律行為が1通の証書に記載されている場合には、それぞれの法律行為ごとに、別々に手数料を計算し、その合計額がその証書の手数料になります。法律行為に主従の関係があるとき、例えば、金銭の貸借契約とその保証契約が同一証書に記載されるときは、従たる法律行為である保証契約は、計算の対象には含まれません(手数料令23条)。

・任意後見契約のように、目的価額を算定することができないときは、例外的な場合を除いて、500万円とみなされます(手数料令16条)。

・証書の枚数による手数料の加算 法律行為に係る証書の作成についての手数料については、証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます(手数料令25条)。

(2)信託監督人を置く場合

受託者を監視する機能として、受託者の金銭の使い込みなどの行動を未然に防ぐ為にも、第三者に定期的に見てもらうというものです。
報酬金額は専門家によっても違いがありますが、概ね月額1万円からとなります。

(3)その他の費用

① 弁護士事務所や司法書士事務所に契約書の作成を依頼するケース
→ 概ね財産に対して0.1~1.0%の手数料
② 信託財産に不動産がある場合の登録免許税
→ 固定資産税評価額の0.4%(平成31年3月31日まで、土地に関しては0.3%)
③ 信託財産に不動産がある場合の登記手続費用
→ 一般的に固定資産税評価額を基準に報酬算定

2.家族信託の活用

次に「家族信託」は費用も安く、生前に行う「認知症対策」や「相続対策」もできますが、万能ということではありません。その部分で誤解のないようメリット・デメリットをしっかりと把握する必要があります。

以下のように、その活用方法は幅広いものがあります。

① 委託者と受託者の合意で信託契約書を作成し、受託者は直ぐに財産の管理等を始められます。

② 受託者は、被後見人の財産内容を減らさない方向に力がはたらく成年後見制度(法定後見・任意後見)では不可能な、積極的な内容(不動産の売却等)の財産管理も含め、実行していくことができます。

③ 自分の死後に発生した相続についても、財産を承継する者を指定することができます。

④ 遺言書を書くことに抵抗がある親等も、「今を生きるために財産管理を息子に任せる」という信託は、受け入れやすいものであり、「契約」という形にすることによって締結しやすくなる心理的効果も期待できます。

⑤ 遺言書は書き直しや取消しができますが、信託は容易に変更や終了ができないことから作りかえられるというリスクが軽減されます。

⑥ 信託には、万が一委託者や受託者が債務を負っても、信託財産は差し押さえられないという機能により守られます。

① 信託契約に不備があると、受託者が勝手に、委託者の意図とは関係なく任せられた財産の売却・処分等を行ってしまうリスクがあります。

② 受託者を誰にするか、親族の中や他の機関に依頼する場合に揉める可能性があります。

③ 成年後見人でないとできないことがあります。
認知症になった場合の適切な身上監護(※)等は、法定代理人である成年後見人でなければできなくなります。

※身上監護とは、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する行為。医療契約、住居に関する契約、施設入所契約、介護契約、リハビリに関する契約などがあります。

④ 実務として行っている専門家がまだ非常に少なく、税務上や法律上不明確な点があります。

3.まとめ

「信託」と聞くと、あまりいい印象を受けないというご意見をお客様からよく頂戴します。
しかし、制度をしっかり理解し、「家族信託」に強い専門家に相談することで「家族信託」について不安は解消されると思います。
現状ではまだ、実務経験のある「家族信託」に強い専門家も少ないですが、「家族信託」は、これから徐々に身近な制度となっていくものと思われます。
もしご自分の身辺に思うところがあれば、まずは相続ハウスにご連絡ください。