相続のよくある質問

質問海外に預金がある場合の相続手続き

私の主人は、過去に海外赴任していたことが有り、まだ海外に結構な額の預金が有ります。
もし、先に主人が逝ってしまった場合、この預金の手続きがとても大変そうです。
主人は、利息が日本より良いので、ぎりぎりまで解約を考えていない様子ですが、突然何かがないとも限りません。
海外の預金を相続するのは、どれくらい大変なのでしょうか。

答え国にもよりますが、大変なところだと費用が100万超、期間も3年程度かかる場合もあります

海外財産に相続が発生した場合、プロベート(検認)という裁判所が関与した手続きを経ないと口座資金を引き出すことができない場合が有ります。

プロベナートとは、簡単に言いますと、裁判所が「相続財産管理人」のような人を選任して、その人が相続財産の手続き(解約等)を執行していきます。預金の払い戻し(解約)手続きが終了した段階で、相続人に分配されます。
ここでいう裁判所は、現地の裁判所である必要が有りますから、現地の弁護士を選任することになります。

一方で、いくつかの書類は、日本でも取得が必要になります。その中には、日本の家庭裁判所での審判書等や弁護士等の意見書が必要な場合も有りますので、その場合は、日本でも弁護士等の費用がかかってきます。その上、日本で取得した書類等には、その国の言葉への翻訳も必要になりますので、ご自身で翻訳等が難しい場合には、専門の翻訳家又は通訳等の報酬もかかってくるでしょう。

こうなると、期間も費用も膨大になります。手続きだけで100万円を超えてしまったり、期間も長い場合は3年程度かかることも有ります。
そこまでしてでも、解約したい預金でない場合、海外の預金をあきらめる方も多いようです。

ここで、比較的簡単にできる手続きとして、日本で相続手続きをなるべく済ませることで、早く安くできる方法も有ります。その手順は、下記の通りです。
① 日本の家庭裁判所で遺産分割調停を申し立て、調停調書を作成してもらう
② ①を翻訳する
③ ①と②を公証役場に持ち込み、認証を得る
④ 外務省で、③の公証人が間違いなく公証人である旨の証明をもらう
⑤ 現地の大使館で関係者の署名などが本物である認証をもらう

その他、必要な国内の書類についても②以降の手続きを経て、揃った書類を銀行の払い戻し請求書と共に郵送すれば、1ヶ月程度で銀行の小切手が郵送されてきます。
この方法で手続きをすれば、費用も約30万円~50万円程度で済み、期間も半年もかからずに済みます。

ただし、この簡単な手続きは、すべての国の銀行で可能なわけでは有りません。
制度が日本と似ている大陸法系の国では比較的手続きがスムーズに進み、比較的早く手元に入りやすいと言われています。
逆に、アメリカやイギリスなどの英米法系の国では、手続きが煩雑で、手元に入るのが困難と言われています。
この大陸法系と英米法系をどの国が当てはまるかといいますと(こちらは、諸説有ります)、表のようになります(相続ハウス調べ)。

表

これらの手続きを経てでも、海外に預金を残しておくか、なるべく、生前に日本に送金しておくか、一度、家族とよく話し合ってみてはいかがでしょうか。
そして、相続が発生してしまった場合には、国際手続きに詳しい専門家にご相談することをお勧めします。