相続のよくある質問

質問限定承認をすると税金がかかるって本当?

父の相続が発生したのですが、父には借金があったようで、財産を相続すべきかどうか迷っています。
そこで限定承認という方法があると知り、相続人同士で検討しているのですが、どうやら限定承認をすると税金がかかるらしいと聞きました。
限定承認にかかる税金とはどんなものでしょうか?

答え相続財産の中に含み益があるものが含まれている場合にみなし譲渡所得税がかかります

限定承認は、相続人がプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという方法です。マイナスの財産(借金など)がプラスの財産を上回ったとしても、上回った部分に関しては支払う必要はありません。逆に、プラスの財産がマイナスの財産を上回った場合は、上回ったプラスの財産はそのまま引き継ぐことができます。

この方法は、判明していない借金があるかもしれない場合などに有効で、使い方によっては便利な制度と言えるでしょう。
しかし、実際には相続放棄に比べ、かなり利用される頻度が少ない手続きです。これは、手続きが煩雑であるという理由が考えられます。また、税務上の落とし穴があります。
限定承認を行うと、被相続人が相続人に対し、財産を時価で売却したものとみなして「みなし譲渡所得税」が課税されるのです。このみなし譲渡所得税は、相続人が準確定申告を行い、税金を納付する必要があります。

例えば、被相続人が1,000万円で購入した土地が相続時には1,500万円まで時価が上がっていた場合、被相続人はこの土地を時価で相続人に譲渡し500万円の利益(含み益)を得たとみなされ、500万円に譲渡所得として所得税が課税されます。
被相続人に債務があった場合は、その債務に加え、所得税もマイナスの財産として引き継ぐことになります。

ただし、被相続人の債務と譲渡所得税の総額がプラスの財産を上回る場合は、限定承認の手続きを行っているので上回った部分について相続人が支払う必要はありません。
そのためプラスの財産よりマイナスの財産が多い場合には、相続人が支払う債務総額はプラスの財産合計金額ということになり、同じ支払い額になります。
マイナスの財産よりプラスの財産が上回る場合は、相続人が支払うべき債務の金額は所得税の分だけ増えてしまいます。
ですので、被相続人の借金を恐れてむやみに限定承認を行うと、単純に相続する場合に比べて支払うべき債務が増えてしまう場合があります。被相続人の財産調査をできる限り行い、慎重に判断する必要があるでしょう。
また、限定承認を行うには相続人全員で申述する必要があり、各相続人が単独で行えるものではありませんので、その点にもご注意下さい。