私は、先日、入籍をしていない妻との間に子供が生まれました。
入籍はしていませんが、一緒に住んでいます。
実は、私には、前妻との子供もおり、その子供は、妻が引き取っています。
このような状況なので、遺言書の用意をした方が良いとも思うのですが、まだ親も元気ですし、私の財産自体も変わる可能性があると思うのです。
私のような者が今からできる対策など、あるのでしょうか。
まだ、親御さんもお元気なうちに自分が遺言書についてお考えになるのは、すばらしいことだと思います。
遺言書は、揉め事を回避するために作成される方が多いようですが、遺言に詳しい専門家に相談することで、手続きをスムーズにする効果もあります。
ですから、相続人同士があまりコミュニケーションをとっていないなどの場合には、遺言書の用意がしてあると、遺された方にとっては、とてもありがたいことです。
ところが、ご相談者様のように、まだお若いという方ですと、将来の財産や相続人が変わる可能性もあると思います。もちろん、気持ちが変わる可能性もあると思います。
そういう方は、まずは、自筆証書(手書きの)遺言を用意してはいかがでしょうか。
自筆証書遺言とは、読んで字の如く自分ですべてを直筆で書く遺言書のことです。この方法を選ぶと、他の人に代筆してもらうことやパソコンを使用したものは無効になってしまいます。
自筆証書遺言のメリットデメリットは、下記のとおりです。
自筆証書遺言は、ご自身だけで作成ができるという簡便な点がメリットと言えるでしょう。これに対して、「公正証書遺言」というのがあるのですが、これを作成するとなると、公証役場に出向いて公証人に作成をしてもらわなければなりません。
また、公証人との予定調整なども必要になってきてしまいますので、すぐに作りたい!と思い立ったときに、作成ができないのです。
自筆証書遺言は、自分1人で作成ができますので基本的に費用はかかりません。
上記でも述べたように、公正証書遺言を作成する場合には公証人に遺言書を作成してもらう手数料がかかってしまいます。また、遺言書作成の立会いに証人を用意する必要がありますので、公証役場の方に証人になってもらった場合にはその費用もかかってきます。
一度用意した後、何度か書き直す可能性がある場合(若い等)は、費用をかけてしまうと書き直しを躊躇することにもなりかねませんので、この方法を選んだ方が良いともいえます。
自筆証書遺言は、その内容と存在を誰にも知られずに保管しておくことができます。
もし、ご自身の意思を遺言書の内容確認時まで伏せておきたいということであれば、自筆証書遺言の形式で作成していただければ秘密を保つことができます。
自筆証書遺言は、気軽に書けて良いというメリットがありますが、すべてを直筆で書かなくてはならないというデメリットもあります。
すなわち、財産がいくつもある場合や、最後のメッセージだからしっかりと書こうと思っていると、パソコンやメールが主流の現代、直筆で書くというのは、意外と大変です。
例えば、すべてを直筆で書かなくてはなりませんので、手間がかかります。誤字や脱字を出してしまった場合の訂正は煩雑ですし、最後のメッセージだからと、誤字や脱字を書いてしまった場合に、はじめから書き直すという方も少なくありません。こうなると、結局、十何通目で、やっと間違いなく書けたということもあります。
自筆証書遺言は、その性質から1人で作成されることが少なくありません。
そうした場合に、作成時に、もしかしたら脅されて書かされていたりしても文面では伝わりません。
また、作成をした後に、相続人の誰かが勝手に書き直してしまったとしても気付けないという危険もあります。
亡くなるまで遺言書の存在と内容を秘密にできるというのがメリットと言えますが、逆にいえば、亡くなった後に誰からもその存在を見つけてもらえないという恐れもあります。
公正証書遺言のように、遺言書を確実に第三者が保管しておいてくれる訳ではないですから、できれば、存在とありかをご家族に伝えておいた方が安心かもしれません。
自筆証書遺言は、公正証書遺言のように形式面で無効になることはないというリスクが保障されている訳ではありません。無効にならないように、日付や署名など、必ず書かなければならない内容があります。
自筆証書遺言は、簡単に作成ができるが故に、どのような形式で、何を書くのか、などがわからないままに個人の判断で作成されてしまうこともあります。そうなると、せっかく遺した意思が無効となってしまう可能性があるのです。
また、無効にならなくとも、財産の特定ができていない曖昧な表現である場合、色々な解釈ができたり、その財産を特定できないという事態になります。そうなると、結局遺された相続人間で解釈に違いが生じ、紛争を導きかねません。
自筆証書遺言は、発見されてから「すぐに」その遺言内容に基づいて手続きを進められる訳ではありません。
家庭裁判所で検認手続きを行わなければならないのです。
この検認手続きには、時間と手間がかかります。
これを行うには、戸籍等の収集が必要になり、かつ、家庭裁判所に申し立てをしてから内容を確認できるまで通常2週間程度かかってしまいます。
以上が、自筆証書遺言のメリットとデメリットです。
ご相談者のような状況にある場合は、遺言書は用意していただけた方が、ご家族が安心でしょう。
もし、揉める恐れもありそうということであれば、公正証書遺言も検討していただければと思います。