相続のよくある質問

質問約30年前の生前贈与、遺産分割と税金について教えてください

私が結婚する際に、父から自宅の贈与を受けました。
この自宅は、当時の時価が約5,000万円だったのですが、今、8,000万円になっているといいます。当時、私が贈与されたときは、父との間で贈与契約をしているものの、登記上は、父のままです。
その父が亡くなり、妹と遺産分割で揉めています。
妹は、これは特別受益に当たるとして、この自宅以外の財産2,000万円は、すべて妹のものだとして、半分に満たない代償分の3,000万円を求めてきています。この代償分は、支払わなくてはならないのでしょうか。
また、当時の贈与時には、贈与税を払っていません。これは、時効だと思うのですが、その考えで間違いは無いでしょうか。

答え自宅も相続財産に含まる可能性は有りますし、代償分も用意が必要かもしれません

まず、遺産分割についてですね。
特別受益に該当するかどうかも問題になりますが、これに充たるとされた場合には、原則として、現在の価値で評価して、遺産分けすることになっています。
妹様の主張が通ることが見込まれます。

特別受益に充たるかどうかは、特別受益を主張してきている相続人以外の相続人もこれを認めるかどうかによりますが、争いが拗れて裁判になった時には、認められにくいものでもあるようです。この点、住宅資金等は特別受益にあたるとされやすいように思いますので、そういった意味でも、妹様の主張に応じる必要があるかもしれません。
兄妹での裁判は、なかなか酷ですので、ある程度協議の上、譲歩し合って、決着をつけた方が却って良かったということになるのではないかと思います。

次に、贈与税の時効についてですが、これは当時の自宅贈与が成立していると「税務署」に認められるかどうかがポイントです。この点、契約書があるので、民法上の権利としての贈与は成立しています。これを「税務署」が認めるかどうかです。

確かに贈与が成立しているということであれば、原則として時効は6年、悪質な場合には1年が追加され、7年になります。贈与があったことを知らずに贈与することは基本的には考えにくいので8年が時効となるケースが多いです。本件は、既に30年ほど経過しているとのことですから、確実に時効です。

ところが、過去にあった判例で、贈与契約書は公正証書であるものの、悪意を持って不動産の登記をしておらず、贈与の時効が過ぎてから登記を行った親子が税務署に負けたことがあります。
相続が発生してからこのことが発覚したのですが、契約書締結日は贈与時と認められず、登記を行った時が贈与時と判断され、結果として、実際の贈与のときに払っていればよかった贈与税額の倍にもなる税金を支払いました。

登記をわざとせず、贈与の直後に父が亡くなれば相続税の対象だと主張し、時効が過ぎたら贈与税の対象だと主張する。どちらでも対応できるようにしていると悪意があると判断されるのだと思います。
このような理由でなければ、税金の問題は解決するのではないでしょうか。