相続のよくある質問

質問認知症の相続人がいて困った

私の母は認知症が進んでいて、今までは、父が全部面倒を見ていました。
私の家族は、3人兄弟で、順番で毎週末両親の元に行ってお世話などをしていましたが、先日、父が急に母を置いて逝ってしまいました。
兄弟で話し合って、母には特に後見人などを立てずに、遺産分割協議は、3兄弟で行い、母の印鑑は私たちが、代理で押印予定です。
何か問題になりますでしょうか。

答え遺言書を遺しましょう

認知症で判断能力が乏しい可能性がある方の押印を、相続人の誰かが代理でした遺産分割協議書は無効です。通常は、代理人など、法律で決められた手続きを行って遺産分割協議書を作成します。

ですが、銀行の手続きも不動産登記の手続きも、遺産分割協議書等相続手続きに必要な書類があれば、解約や名義変更ができます。手続きの中で、相続人全員と面談等して、判断能力があるかどうかを確かめたりはしません。誰からも文句を言われなければ、代理であるかどうかを他人は、知ることはできませんから、問題ないといえるでしょう。

しかし、これが後に揉め事に発展した場合には、大問題です。
例えば、本音は、その分割協議に納得をしていなかった兄弟がいる場合や、兄弟の配偶者等が発言力を持って首を突っ込んできた場合など(法的に配偶者は無関係)です。
また、本件のように、今後、母の介護が必要で、遺産分割時には、みんなで協力しようと合意していたけれど、周りの環境の変化等から、だんだん、兄弟が均等に介護に関われなくなることもあると思います。そして、その費用負担や介護を他の兄弟が手伝ってくれず、不満に思う人が出てきたりすると、「もっと、父の相続のときに遺産をもらっておけば良かった」となるかもしれません。
訴えを起こされてしまうと、遺産分割協議書は無効ですから、はじめから分割協議をしなくてはなりません(※)。これが長引き、相続人の子世代にまで揉め事を持ち込んでしまい、迷惑をしている方もいらっしゃいます。

このようなことにならないように、きちんと法的な手続きを進めましょう。特に、後見人などを立てると遺産分割は、法定相続分が目安になりますから、子供だけで分割したい場合などは、それを実現するのがとても難しくなります。
こちらも回避したいということであれば、事前に遺言書等を用意しましょう。
高齢化が進む現代ですから、遺言書を作成して、事前に様々な問題を回避してもらいたいと思います

※・・・遺産分割から訴えまでの期間の長短や相続財産の種類によっては、遺産分割の無効を第三者に対抗できない場合も有ります。