相続のよくある質問

質問相続税の申告は自分でできますか?

父が先日他界しました。
相続税の申告が必要なのですが、私も定年になり、時間があります。
できることならば、費用もかけたくないと考え、自分で申告をしてみようと考えています。
自分で行っても良いのでしょうか。

答え自分でできますが、損をしたり、リスクが高くなったりします。

「相続税の申告書を自分で作成してはいけないのですか?」というご質問をいただくことが稀にあります。結論から申し上げますと、ご自身で作成いただき、税務署に提出することは全く問題ありません。やろうと思えば、自分で申告することはできます。

ですが、相続税の申告は、所得税の申告と比べるとより難易度が高く、税理士に依頼するのが一般的です。

相続税の申告をご自身で行えば税理士に支払う報酬が浮くことになると考えるのはよく分かります。ところが、税理士に依頼することで、この報酬を支払うよりも多額の税金を抑えることができるということもあるのです。

ですので、ご自身で申告を行うかどうかを迷われている方は、以下が少しでも参考になればと思います。

(1)ご自身での申告でも良いと思う方

・一生に何度も経験することではないので、勉強の為にも自分でやってみたい

・相続財産が現預金のみである(但し→(2))

・相続財産が基礎控除額を越えるか超えないかぐらいである

・すべてを配偶者に相続させる予定で相続税がかからない(但し→(2))

・申告期限までに充分に時間がある

(2)自分で作成した場合のリスク
①税務調査が入る可能性が高くなる

税理士が相続税の申告書を作成した場合、申告書に税理士の署名捺印がされますが、依頼をせずに個人で作成をした場合にはこれがありませんので、個人で作成したことが分かります。
税理士が作成をしていないと、計算ミスや判断ミス(例えば、小規模宅地等の特例が使えないのに使っている)、相続財産の計上漏れ(特に生前贈与や名義預金)等があるのではないかと税務調査に選定される可能性が高まります。
税務調査に入った場合の追徴率が、約80%(*)ですので、調査に入られないようにすることが、重要だということがわかると思います。

*国税庁のHP「平成●事務年度における相続税の調査の状況について」より

②相続税を余計に納める可能性がある

例えば、相続税では、特殊な財産評価を必要とします。
相続税の申告書作成の経験が豊富な税理士は、それらの財産評価(主に不動産)を行う際に、これまでの経験や知識等で、素人では知り得ないようなテクニックを使って評価額を下げる努力をします。
相続財産の評価額が下がれば、その評価額に課税された相続税額も下がるということになりますので、結果的に納める相続税を減らせます。

ですが、個人で計算を行った場合には、評価額を下げる方法を知らない、知っていても根拠の算出方法が分からない等といった理由から、単純に相続財産の評価を行ってしまうかもしれません。そうなった場合、本来であれば極限まで節税できた相続税を、知らないうちに多く支払ってしまったという結果になる可能性もあります。

このように評価方法だけでなく、遺産分割方法、特例の適用など、様々な場面で経験や知識等が必要になりますので、ご自身で相続税の申告をして、(例えば二次相続までを想定して計算した相続税額の)トータルで考えたときに、信じられないぐらい多くの税金を納めている方は意外と多いです。

(3)いつまでに税理士に依頼すればよいのか

自分で申告書の作成に挑戦してみたものの、やはり税理士に依頼した方が良かったのでは…と途中で考えを変える方もいらっしゃいます。
また、そもそも相続税の申告が必要であることを途中まで知らなかったという方もいらっしゃるでしょう。

そういった場合、税理士を探して依頼をするにしても、あまりにも申告期限が迫っている場合には、依頼を断ることもあります。なぜなら、相続税の申告書作成には税理士が対応する場合でも時間と手間がそれなりにかかりますし、他の案件もあるためです。

また、相続税申告は、税理士なら誰でもできる分野とは言えません。依頼した税理士が相続税の申告に慣れていない等でしたら、尚更です。

事務所等によって判断は異なりますが、一般的には申告期限から遡って1ヶ月を切っている場合にはお断りされるところが多い様に思います。

また、3ヶ月を切っている場合には、依頼は受けるかもしれませんが、割増料金が別途請求されることもあります。

いざとなったら税理士に依頼すれば良いというお考えの方がいらっしゃいましたら、依頼をするにもある程度の時間が必要になってくるとお含みおきください。

相続税の申告は、基本的には税理士に依頼をするという考えが主流ではありますが、絶対に出来ないという訳ではありません。こちらを参考にしていただいて、断念されたときには、一度ご相談ください。

※当店では、作成した申告書のチェックは、無償では行っておりません。