「小規模宅地の特例」をご存知の方は、とても多いのではないでしょうか。
ただ、その具体的なところ、と言うと、そこまでは詳しくないという方もいらっしゃると思います。
そこで、今回は、小規模宅地の特例を分かり易く解説したいと思います。

Ⅰ 小規模宅地の特例

個人が、相続又は遺贈により取得した下記用途として使用していた宅地等について、一定の限度面積まで、減額できる特例が有ります(この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。以下「小規模宅地の特例」)。
・被相続人の居住用宅地等(自宅等)
  ・被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住用宅地等(同上)
  ・被相続人の事業用宅地等(アパート・マンション、商店等)
  ・被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族の事業用宅地等(同上)
  ・特定同族会社の事業用宅地等(同上)
※相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。

Ⅱ 趣旨

分かりやすく解説すると、被相続人が住んでいたところや行っていた事業は、相続人にとってもそれが生活基盤を維持しているものであって、相続税納税のために、この宅地等を処分しなくてはならず、それによって生活基盤を喪失することを避けるために配慮されたものです。

Ⅲ 減額割合

図1

① わかりやすく言うと、商店等のお店を営んでいる場合に適用します。
②・③ わかりやすく言うと、会社に貸している場合に適用します。そのうち、②は家族が行っている会社に対して貸している場合になります。
④・⑤ わかりやすく言うと、アパートやマンションとして貸している場合に適用します。④は対象物件を、アパートやマンション経営をしている会社に貸している場合になります。
⑥ わかりやすく言うとご自宅の場合に適用します。

特例が適用できる宅地等を2つ以上持っていた場合は、限度額までは併用できますが、限度面積が異なる区分である場合は、その限度額に占める割合を別の限度額に換算した場合の残りの面積まで、適用することができます。

例えば、(a)150㎡のご自宅の他に、(b)300㎡のアパートを保有していた場合、⑥でご自宅の全面積を適用したとします。
このとき、(a)の限度面積は、330㎡ですが、200㎡に換算すると91㎡になります。したがって、(b)は、残りの109㎡(200-91)について、⑤を適用できます。

Ⅳ 特例適用の要件

小規模宅地の特例を適用できるための主な用件は、下記のとおりです。
細かい部分もありますので、実際に適用できるかどうかは、必ず税理士に相談してください。

・引き継いだ(相続開始前から営んでいた)事業を、相続税の申告期限まで営んでいること
・その宅地等を相続税の申告期限まで、有していること

<配偶者の場合>
・要件は有りません

<同居していた親族の場合>
・相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住していること
・その宅地等を相続税の申告期限まで、有していること

<同居していない親族>
・被相続人に配偶者や同居していた親族がいないこと
・相続開始前3年以内に自己または自己の配偶者が所有する家屋に居住していないこと
・その宅地等を相続税の申告期限まで、有していること

・相続税の申告期限においてその法人の役員であること
・その宅地等を相続税の申告期限まで、有していること

・引き継いだ(相続開始前から営んでいた)貸付事業を、相続税の申告期限まで営んでいること
・その宅地等を相続税の申告期限まで、有していること

Ⅴ 手続き

この特例の適用を受けるためには、相続税の申告が必要になります。その申告時に、特例を受ける旨を記載し必要な書類を添付します。
特例を受ければ税金がかからないなどの場合、これを適用すると相続税がかからないからと安心して、放置してしまった場合、後で申告をしようと思っても、相続発生から一定の期間が過ぎてしまうと、特例を適用できなくなりますので、必ず、ご確認のうえ、申告手続きを行ってください。