不動産を購入するだけで相続税の節税になると聞くけれど、どういうこと?と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、どうして、不動産の購入をするだけで、節税になるのかの仕組みを解説したいと思います。

(1)不動産を購入した場合

相続税の計算上、土地は、原則として路線価という評価方法で評価します。
この路線価は、実際にその土地を売買した場合に得られるであろう金銭の価値(市場価格)よりも一般的に低くなっています。
低くなる割合は、地域や周りの環境、土地の形や場所などによって様々ですが、例えば、市場価格の80%であったとします。
となると、現預金1億円で購入した不動産は、8,000万円となり、それだけで、評価が下がるのです。

相続税の計算上、建物は、原則として固定資産税評価額で評価します。
これは、固定資産税を納付する際の元となる評価です。固定資産税は、この評価から、市区町村ごとの加減算をした標準額から毎年の税金を計算しています。
この固定資産税評価額も、一般的に建築費用より低くなる傾向にあります。
実際にその建物を建てた場合に比べて、概ね40~70%程度の評価になるともいわれております。そのため、例えば、現預金1億円を建物の建築費用に替えた場合、7,000万円になったとします。

これだけで、2億円が1億5千万円になり、約1/4の資産を圧縮することになるため、相続税対策になるのです。

(2)購入した不動産を貸した場合

さらに、これを貸した場合、借主にも権利が一部移転することになりますので、持ち主(貸主)は、その分を差し引くことができます。
土地は、(1)の評価額からその評価額に借地権割合と借家権割合及び賃貸割合を乗じたものを差し引くことになります(※1)。
建物は、(1)の評価額からその評価額に借家権割合と賃貸割合を乗じたものを差し引くことになります。

(※1)土地だけを貸す場合は、、(1)の評価額からその評価額に借地権割合を乗じたものを差し引くことになります

ここで、借地権割合とは、自用地に対する借地権価格の割合をいい、借地権とは、その土地を使用できる権利を言います。
借家権割合とは、所有している家屋を貸している場合に、通常の建物の評価額に対する建物の貸家の評価額の割合のことですが、現在ほとんどの地域が30%となっています。
「借地権割合」及び「借家権割合」は地域により決まっており、その割合は路線価図や評価倍率表で確認できます(国税庁のホームページで確認することができます)。

例えば、借地権割合が80%出会った場合、人に貸すことで、土地は6,080万円(※2)、建物は4,900万円(※3)と評価されますので、合計で1億980万円となり、現預金でもっていた場合の約半分になります。

(※2)8,000×(1-80%×30%×100%)
(※3)7,000×(1-30%)

(3)それ以上に評価が下がる場合

さらにさらに、この貸した不動産の土地に「小規模宅地等の特例」が適用できた場合や、不動産購入で一部を借入れた場合等は、より節税効果が高くなります。
小規模宅地等の特例で、土地の評価が(2)の50%となった場合、土地は3,040万円となりますので、現預金で持っていた場合から見ると、約6割の圧縮ということになります。

(参考)
不動産購入節税の仕組み図

このように、現預金で持っている場合よりも、不動産を購入した方が節税になるのです。
このうち、戸数のわりに土地が狭いタワーマンションなどは、より効果が高くなるということで、多くの資産家が相続対策に利用していましたが、今は、税務署の目が厳しくなったということで、少し落ち着いているようです。
また、不動産は、節税効果は高いと思いますが、金融資産よりも換金性が低くなり、分けることが困難かつ、他のトラブルを起こしかねませんので、これらのデメリットも把握した上で、相続人と話し合いながら、対策していただければと思います。