相続のよくある質問

質問戸籍の見方と収集の仕方を教えてください

相続が発生しました。
戸籍を収集しなくてはならないのですが、どのようにどういうものを取得する必要があるのでしょうか。
また、1式用意すればいいですか。何式かあったほうがよいのでしょうか。

答え戸籍の収集は、現在のものから、ひとつずつ前に戻って探していきます
(1)戸籍が必要な場面

相続手続きをする際に、誰が法定相続人であるかを確認するための客観的な資料として、主に次のようなときに(2)でご説明するA及びBの戸籍が必要になります。

手続き 備考
遺言書の検認
相続税の申告 被相続人の死亡から10日を経過した日以降に作成されたもの
不動産の相続登記 相続関係図の提出により、原本還付可能
なお、遺言書がある場合は、原則として、被相続人の戸籍は、死亡の記載があるもので足りる
預貯金や証券口座の名義変更 遺言書がある場合は、被相続人の戸籍は、死亡の記載があるもので足りる場合がある(各金融機関等によって異なるため確認が必要)
相続放棄 被相続人の戸籍は、死亡の記載があるもので足りる場合がある
相続人の戸籍は、相続放棄する人の分のみでよい
限定承認

このうち、預貯金の名義変更はほとんどすべての人がかかわる手続きだと思いますので、相続が発生すると、誰しも戸籍謄本が必要になると考えられます。

(2)戸籍の見方

戸籍謄本には、戸籍の現状だけを示したものや、過去の履歴を示したものなどがあります。
相続の手続きで、必要になるものは主に下記の二種類になります(それ以外で必要な戸籍については、(4)で解説)。

A 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本を含む)
B 相続人全員の現在の戸籍謄本

① 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)

「戸籍」と言っても、相続手続きで必要な戸籍には、いくつか種類があります。
基本的に見た目はほとんど同じなのですが、意味の異なったものですので、違いを確認しましょう。

戸籍・・・現在有効な戸籍。現在戸籍とも言う。
原戸籍・・・書式の変更等のためにできた古い戸籍。
除籍・・・その戸籍に居る人が全員亡くなっているか、または転籍(本籍を移すこと)などで、全員居なくなっている戸籍。

除籍も原戸籍も古い戸籍なので、全員が亡くなっている除籍以外は、その戸籍の前の戸籍と、後の戸籍が存在します。
その場合、その戸籍の前の戸籍と、後の戸籍のことについては、除籍や原戸籍の本籍と筆頭者の欄のすぐ左横、または下の冒頭部分(図(X))に記載されています。

コンピュータ化された現行戸籍

現行戸籍

大正4年式戸籍

なお、戸籍の前と後のこととは、どこの本籍の戸籍から、その除籍や原戸籍に来たのかということと、次にその除籍や原戸籍から、どこの本籍の戸籍に移ったのかということです。

また、個人に関する欄は、その除籍や原戸籍に居た人の数だけ欄で区切られており、
それぞれの欄に名前が大きく記載されています。

個人に関する欄の記載事項としましては、その個人の父と母の氏名、個人が出生した年月日のほか、身分事項などが記載されています。

ここで注意しなければならないことが、個人に関する欄には、『昭和○年○月○日東京都世田谷区○○で出生』といった内容が記載されますが、この記載は、この戸籍がその人の出生からの戸籍であるという意味ではないということです。

「出生」の記載があるため、この戸籍が出生からのものだと勘違いしてしまう方が多いので、注意しましょう。

相続で必要とされている出生からの戸籍という意味は、生まれた時点に居た戸籍から現在戸籍までが必要ということです。

② 相続人全員の現在の戸籍謄本

①でいう、現在戸籍のことです。被相続人と同じ戸籍にいる場合は、①に含まれますので、別途取得の必要はありません。

(3)戸籍の収集方法

まず、被相続人の最後の本籍地の市町村役場にて、被相続人が死亡した時の戸籍(除籍)謄本を取得します。その戸籍から、「一つ前の本籍地」が記載されている箇所を見つけ(図(Y))、一つ前の本籍地の役所にてまた戸籍謄本を取得する…という流れを繰り返します。

死亡時点の戸籍から一つずつ遡って、出生時の戸籍謄本にたどり着くまで行います。

戸籍の請求は、市区町村役場に直接出向くほか、郵送でもできます。1箇所で、改製等により数通の戸籍がある場合もありますので、全部取得するようにしましょう。
本籍地は現住所と異なることが多いため、あらかじめ確認しておきましょう。本籍地がわからない場合は、本籍地の記載がある住民票(被相続人の場合は住民票除票)の写しを最後の所在地(住所地)に確認します。

①市区町村役場で請求する場合

市区町村役場に直接出向いて戸籍謄本を請求する場合は、次のものが必要です。

・ 戸籍交付申請書(各市区町村が定める様式に必要事項を記載)
・ 印鑑(認印でも可)
・ 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)

請求者と被相続人の関係が戸籍から確認できない場合は、その関係が確認できる戸籍が必要です。また、代理人が請求する場合は、委任状のほか代理人の本人確認書類も必要です。

②郵送で請求する場合

郵送で戸籍謄本を請求する場合は、次のものが必要です。

・ 戸籍交付申請書(各市区町村が定める様式に必要事項を記載のうえ、押印)
・ 本人確認書類のコピー(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどのコピー)
・ 手数料に相当する定額小為替
・ 返信用封筒と切手

手数料は定額小為替で支払います。これは、郵便局等で購入することができます。12種類の定額小為替がありますが、全金種共通で100円の手数料がかかります。
うまく購入しないと、余計に費用がかかったり、請求先に郵送した定額小為替が不足すると、余計なやり取りがある分、取り寄せに時間がかかってしまいます。少し多めに同封しておくとよいでしょう。返信用の切手についても同様です。

市区町村役場で請求する場合と同様に、請求者と被相続人の関係が確認できる戸籍、委任状、代理人の本人確認書類のコピーが必要になることもあります。

③専門家に依頼する場合

戸籍の取り寄せが難しいと感じる場合や、市区町村役場の窓口が空いている平日の日中に時間が取れない場合などは、戸籍の取り寄せを司法書士などの専門家に依頼するとよいでしょう。

戸籍の取り寄せを専門家に依頼する場合は数万円程度の報酬がかかりますが、相続人は戸籍を取り寄せる苦労から解放されます。たくさんの戸籍が必要になる場合は、漏れなく戸籍謄本を取り寄せるためにも専門家に依頼することをおすすめします。

なお、戸籍の取り寄せを専門家に依頼する場合は、委任状が必要になります。
不動産の登記を司法書士等に依頼する場合や、相続税の申告を税理士等に依頼する場合は、委任状不要で取得してもらえることもあります。

(4)戸籍収集が大変な場合

被相続人の配偶者と子供が相続するケースでは、(2)でご案内したA及びBがあれば足りますので、相続人自身で取得することもそこまで大変とはいえないかもしれません。
しかしながら、これら以外の戸籍謄本が必要になることがあります。

たとえば、相続人となるべき子供が先に亡くなっていて孫が代わりに相続する代襲相続や、相続人となる子供がおらず親も亡くなっていて兄弟姉妹等が相続する場合などです。

①相続人が亡くなっている場合(代襲相続)

被相続人が亡くなったときに、すでに相続人が亡くなっていることがあります。このような場合、亡くなった相続人に子供がいれば、その子供が相続人となります。これを代襲相続といいます。

代襲相続では、「C 亡くなった相続人(被代襲者)の出生から死亡までの戸籍謄本」も必要になります。これらの戸籍謄本で誰が代襲相続できるかを確認します。

②兄弟姉妹等が相続人になる場合

配偶者の有無にかかわらず、被相続人に相続人となる子供がなく、両親等も亡くなっている場合は、被相続人の兄弟姉妹等が相続人になります。

兄弟姉妹等が相続人になる場合は、「D 被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍謄本」も必要になります。これらの戸籍謄本で、両親が亡くなっていること及び被相続人と兄弟姉妹の関係を確認します。

このように、兄弟姉妹が相続する場合は、最低3名分の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。それに加えて、もし、兄弟姉妹ですでに亡くなっている人がいる場合は、「E 亡くなっている兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍謄本」も必要になります。これで、代襲相続人を確認します。

(5)何式必要か

相続手続きの際には、原則として、原本の提出が必要になります。ただし、ほとんどの機関で、原本の返却をしてもらえます。
しかしながら、金融機関等が複数ある場合には、ある金融機関等の手続きで、原本が戻ってきてから次の金融機関等の手続き、・・・というように、時間がかかる場合もあります。
金融機関等によって、原本はその場で返してくれる場合もあれば、数週間(手続きが終わるまで)返してもらえない場合もあります。
この点、手続きをスムーズに行うために、2~3通ぐらい取得する方もいらっしゃいますが、時間に余裕がある方などは、1通でのんびり手続きをする方もいらっしゃいます。
ただし、相続税の申告など期限があるものの手続きが必要で、期間も迫っている場合等は、念のため、2通以上取得しておいた方が安心かもしれません。