相続のよくある質問

質問未成年の孫にも遺贈されていたのですが、遺言どおりに分割しないといけないのでしょうか

先日、母が亡くなりました。法定相続人は、私と妹なのですが、母は、私と妹だけではなく、私と妹の子供(母から見た孫)にも相続して欲しいという遺言書を遺していました。

具体的な内容では、私の子供2人と妹の子供1人の計5名で均等に分割するようにというような記載で、不動産は誰、預金は誰のような記載ではありません。

妹とも相談したのですが、私たちの子供には、未成年者もいるのですが(私の下の子供と妹の子供)、未成年者に多額のお金を持って欲しくないと思っています。

例えば、私と妹で、母の意志は受け継ぎ、私と妹のみで3:2で分けてしまってもいいものなのでしょうか。

答え遺言書と異なる分割は、全員での遺産分割協議が必要です。

遺言書の内容と異なる遺産分割をする場合は、遺言書に記載されていた受遺者(法定相続人ではない相続人)もすべて含めて協議をしなくてはなりません。

(1)包括遺贈の遺言書が遺されていた場合の手続き

包括遺贈(※)で遺言が遺されていた場合、それぞれの財産をそれぞれ、包括承継するのであれば、原則として、その遺言書で手続きができます。

ただし、すべての財産、特に不動産のように分けられない財産を共有にすることは、望まない方が多いのも事実です。
不動産については、後々揉めるケースも多いので、単独名義にしたいものです。
というのも共有名義の場合、将来手続きが煩雑であったり、トラブルになりかねないからです。

となると、現預金のように分けやすいものは、別として、分けられない財産があった場合には、その割合を参考にしつつも、相続人間で、改めて、分割協議をすることになります。

ところが、今回の受遺者(お孫さん)は、未成年の方もいらっしゃると言うことなので、もう少し手間がかかります。

(2)相続人や受遺者に未成年者がいる場合の遺産分割協議

相続人の中に未成年者がいる場合には、親権者か、親権者も利害関係がある場合は、特別代理人を申し立てて、その方の同意を得なければ、分割協議は完了しません。

今回は、それぞれ、長女と次女は、お孫さん(長女と次女のお子様)と利害関係が生じますので、お孫さんの親権者にはなれません。

そこで、例えば、お孫さんのお父様が親権者として同意する必要があります。

すなわち、遺産分割協議には、長女、次女、孫A、孫B、孫C、孫Bの父、孫Cの父の7名で、分割協議書にサインをする必要があります。

家計図

これで、同意すれば、遺言書とは異なる分割方法にしても構いません。

また、余談ですが、孫Aも未成年であった場合、一人の親で、二人分の代理はできません。
その場合は、別途、一人の特別代理人を裁判書に申立てて、分割協議をすることになります。

※(参考)

遺言書を記載する場合、その記載の方法としては、2種類あります。
「特定遺贈」と「包括遺贈」です。

① 「包括遺贈」
「包括遺贈」とは、財産の全部または一部を包括的に与える事をいいます。

例えば遺言書にて、「相続財産のうち、2/3を長男に、1/3を次男に相続させる」という様に、財産を指定するのではなく、割合で遺す事です。

② 「特定遺贈」
「特定遺贈」とは、遺贈する財産を具体的に指定して遺贈する事をいいます。

例えば遺言書にて、「相続財産のうち、不動産は長男に、預貯金は次男に相続させる」というように、財産を明確に指定してあげる事です。

今回は、このうち、「包括遺贈」という方法で、遺言書が遺されていたことになります。