相続のよくある質問

質問公正証書遺言の作成手順を教えてください

公正証書で遺言書を作成することにしました。
まずは何をすればよいでしょうか。

答えまずはどの財産を誰に相続させる(遺贈する)かイメージしましょう

遺言書の作成をしようと思った場合の手順を見てみましょう。(※一般的な手順ですので、順序が前後する場合があります。)
(1) 相続財産の洗い出し
(2) 誰にどの財産を相続させる(遺贈する)かを決める
(3) 証人に依頼をする
(4) 原案を作成する
(5) 公証人と打ち合わせをする
(6) 必要書類を集める
(7) 公証役場で公正証書遺言を作成する

(1)相続財産の洗い出し

遺言書に記載したい相続財産を洗い出します。
例えば、現預金、不動産、株式等、特に記載をしてはいけないものはありませんが、そこまで影響が無いものは、記載しないことが多いです。最後に「その他の財産は●●に相続させる」等を加える方もいらっしゃいます。

(2)誰にどの財産を相続させる(遺贈する)かを決める

(1)で洗い出した財産を誰に相続等させるかを決めます。誰にどの財産を相続等させるかが決まった場合でも、その実行が難しい場合等は、遺言執行者を指定することもできます。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために具体的な手続きを行う人(または法人等)のことです。
揉め事を避けたい場合や、手続きをできるだけ簡便に済ませたい場合などは、この指定をしておくことがポイントになります。
遺言執行者は、遺産を引き継ぐ相続人等や証人であっても差し支えありません。

なお、祭祀承継者(お墓を引き継いで先祖の法要を主宰すべき者)を指定する必要がある場合は、別途記載を依頼しましょう。

(3)証人に依頼をする

公正証書遺言作成には証人が2名以上必要です。
以下のような人を証人にすることはできません。
・未成年者
・推定相続人
・受遺者とその配偶者ならびに直系血族
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、雇人
上記の人以外であれば、誰にでも依頼することができますが、遺言内容を知人に知られたくないなどの場合は、公証役場で証人を用意してもらうことができます。

(4)原案を作成する

公証人と打ち合わせをして決める場合などは、(1)(2)(3)の内容がわかるメモのようなものを用意します。このメモと打ち合わせの内容を元に、公証人が原案を作成します。
ここで、弁護士や司法書士等の専門家に頼むとこの原案を作成してもらえます。専門家に依頼すべきか否かについては、後述します。

(5)公証人と打ち合わせをする

公証役場に連絡をして、予約した上で、公証人と面談をします。
面談の際は、(4)のメモと(6)の必要書類のうち、すでに取得したものを持参します。
面談でどういう打ち合わせをするかは、公証人によっても異なりますので、詳しくは、予約時に確認しましょう。
面談は、2回ぐらいが平均的な様ですが、遺言内容などによって、それよりも多い場合も少ない場合もあるようです。
また、遺言書の作成を専門家に依頼した場合は、この打ち合わせも専門家がしてくれます。

(6)必要書類を集める

必要書類は以下のとおりです。

① 遺言者の印鑑登録証明書 (「印鑑登録証明書」等の官公署発行の証明書等は公正証書作成日から3ヵ月以内に発行されたものが必要です(以下同様))

② 財産を引き継がせる相続人との続柄が明らかとなる戸籍全部・一部事項証明(戸籍謄本)

③ 相続人ではない人に財産を引き継がせる(遺贈する)場合には、その人(受遺者)の正確な氏名、生年月日、住所等を明らかにできる資料 (入手可能であれば、その方(受遺者)の戸籍謄本、住民票、運転免許証のコピーもあると良い)

④ 遺言者の財産の内容と価額を特定するための資料

ア. 不動産(土地・建物)が相続財産である場合
(ⅰ) その土地・建物の固定資産税等課税明細(通知)書
(ⅱ) その土地・建物の登記事項証明(登記簿謄本)

イ. 預貯金、株式、投資信託などが相続財産である場合
預貯金、株式、投資信託の概要(金融機関・支店名、預貯金の種類、口座・証券番号、概ねの残高・時価等)のメモ
(できれば、通帳や証券の一部(支店名、口座番号・証券番号の記載されている面)のコピーもあると良い)

⑤ 証人となられる人の氏名、住所、生年月日、職業記載のメモ (入手可能であれば、その方(証人)の戸籍謄本、住民票又は運転免許証のコピーのいずれかもあると良い)

⑥ 遺言執行者の氏名、住所、生年月日記載のメモ(証人や相続人等ではない方を遺言執行者に指定される場合には、入手可能であれば、その人(遺言執行者)の戸籍謄本、住民票、又は運転免許証のコピーのいずれかもあると良い)

が必要となります。
※ 遺言の内容によっては追加で必要な書類等や必要のない書類等もありますので、遺言書を作成される公証人にご確認ください。

(7)公証役場で公正証書遺言を作成する

上記で、文案、必要書類がすべて揃いましたら、遺言者は原則として、証人と公証役場に出向き、遺言書を作成し公正証書にします。
このとき、公証役場で支払う手数料は、相続人が相続する財産額毎に下記のとおりとなります。

遺言書に書く財産の合計額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円超え200万円以下 7,000円
200万円超え500万円以下 11,000円
500万円超え1,000万円以下 17,000円
1,000万円超え3,000万円以下 23,000円
3,000万円超え5,000万円以下 29,000円
5,000万円超え1億円以下 43,000円
1億円を超え3億円以下 43,000円に5,000万円ごとに13,000円を加算
3億円を超え10億円以下 95,000円に5,000万円ごとに11,000円を加算
10億円を超える場合 249,000円に5,000万円ごとに8,000円を加算
(8)その他のポイント
○遺言執行者

遺言執行者を指定すると、遺言の内容を確実に実行できる、相続手続きをスムーズに進めることができる、相続人間での紛争が予測される場合に備えることができる、などのメリットがあります。

例えば、不動産の名義変更は遺言書に遺言執行者が指定されていなかったとしても手続きすることは可能です。ですが、預貯金の場合は、遺言書があっても遺言執行者が指定されていないと金融機関は相続人全員の署名と実印の押印、印鑑証明書の提出を求めるケースがほとんどです。この点、遺言執行者が指定されていれば、これらの手続きを単独で行うことができます。(※金融機関によって解除の要件が違う場合もあります)

○専門家に依頼する必要性

遺言書を作成する際、専門家に依頼をするのも1つの手です。
専門家に依頼すれば、公証人との打ち合わせや原稿作成、書類収集などを全て任せることができるためとても楽です。
また、公証人は遺言内容について、法律的に不備があるかは確認してくれますが、この内容で本当に揉めないかどうかや将来どのような問題が起きそうか、税金への配慮等の確認まではしてくれません。
経験豊富な専門家に頼めばそのようなアドバイスをしてくれることもあります。
専門家といえば弁護士、司法書士、行政書士に頼むのが一般的ではありますが、専門家でないと作成してはいけないという法律上の決まりはありません。
一般の人でも遺言作成はできますので、資格がない人が遺言専門店を営業している場合もあります。
専門家に頼む際はその人が信頼できるかどうか、また遺言作成経験が豊富かどうかを確認することをおすすめします。