相続のよくある質問

質問相続放棄をするにあたっての基本的なことを教えてください

父には借金があります。まだ元気ですが、何かあったときには、相続放棄をしないといけないと思っています。
どのような手続きが必要なのでしょうか。また、今からできることはありませんか。

答え相続発生前に相続放棄をすることはできません
(1)相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産を、プラスの財産(預金、不動産)とマイナスの財産(借金等)のすべてを相続しないとすることです。

(2)手続きと期限について

相続放棄の期限は、「自己のために相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内」です。
相続放棄の手続きをするのは、被相続人が最後に住んでいた場所を管轄している家庭裁判所です。

相続放棄の手続きは、原則的には相続を放棄する本人が行います。
この点、通常の相続手続きとは違い、本人のみで行うことができますので、法的には他の相続人の同意や書類などは必要ありません。

費用は、収入印紙800円分(家庭裁判所内で購入できます)及び、郵便切手150~460円分(切手の金額・枚数は各家庭裁判所によって異なりますので、必ず提出する家庭裁判所に確認してください)が必要になります。

必要な書類は、家庭裁判所で入手した「相続放棄申述書」、各市区町村役場で取得した「相続放棄する人の戸籍謄本(または除籍謄本・改正戸籍謄本)」及び「亡くなった人の住民票除票または戸籍の附票」です。
家庭裁判所よっては他に提出書類を求められる場合もありますので、提出する家庭裁判所に確認しましょう。

相続放棄が受理され、手続きが完了すると「相続放棄申述受理通知書」というものが送られてきます。ただし、通知書は1通しかありませんので、被相続人に2箇所以上の債務がある場合は、「相続放棄申述受理証明書」を取得しておきましょう。
相続放棄の手続きが完了しても、それは自動的にどこかに通知されることはありません。手続きが完了したら、速やかに、債権者に通知しましょう。これを怠ると、債権者は、相続放棄をした事実を知らないことになりますので、原則どおり、推定相続人全員に返済請求が来ることになります。

(3)相続放棄のメリットとデメリット

相続放棄をすることで下記のことが可能になります。

① 借金を相続しなくてよい
② 手続きや遺産分割協議をしなくてよい

ただし、相続人が全員相続放棄をした場合は、相続放棄をした相続人の誰かが手続きを行わなくてはならないこともあります。

また、一度、相続放棄が受理されると、原則として、後で取り消しはできません。ただし、脅迫や詐欺などを受けて相続放棄した場合や、未成年者が法定代理人に無断で相続放棄した場合などは、取り消しが認められる場合があります(一定の期限があります)。

(4)注意点
①生命保険の受取人に指定されている場合

生命保険の受取人に指定されている場合は、相続放棄をしても、その受取額は受領することができます。

②相続財産に手をつけてしまった場合

相続財産を一部でも使ったり手を加えたりすると、相続放棄はできません。
例えば、当初は相続放棄をするつもりがなく、不動産について相続登記(不動産名義変更)をしてしまい、後で借金の存在を知って、相続放棄をしようと思っても、できないということです。
相続放棄は全財産が対象ですので、可能性がある場合は、しっかり財産調査をし、財産には手をつけないようにしましょう。

③生前の相続放棄

相続放棄は、相続権が発生してからする放棄の手続きになりますので、生前にすることはできません。
相続放棄はできませんが、それに似たような手続きを生前にできる場合もありますので、詳しくは個別にご相談ください。

④期限を過ぎてしまいそうな場合及び過ぎてしまった場合

一定の状況である場合、期限を過ぎても相続放棄が認められることがあります。例えば、借金があることを知らず、催促状が来てはじめて知った場合などです。
この申請は、一度申請して却下されると再申請ができませんので、専門家の力を借りることをお勧めします。
また、被相続人の財産調査がなかなか終わらず、3ヶ月の期限内にプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いのか判断がつかない場合は、この調査の期間を延ばしてもらう手続きをすることができます。これを「相続放棄における熟慮期間の伸長」といいます。
熟慮期間は、相続人ごとに進行しますので、期間の伸長は相続人ごとに行う必要がありますので、注意が必要です。