相続のよくある質問

質問贈与契約と贈与税の申告は絶対に必要ですか

私は、70歳ですが、相続のことをいろいろ調べていて、どうやら、今ある資産を5,000万円ほど圧縮できれば、相続税がかからくてすみそうだということがわかりました。
そこで、子供2人にそれぞれ毎年500万円程度を贈与すれば、5年でこの圧縮ができると考えています。
この際、各自に贈与の都度、契約書を交わした方が良いのでしょうか。証拠を残すという意味では、振込み等で行えば、記録は残ると思うのですが。
また、贈与税は支払わないといけないのはわかるのですが、どうせわからないですよね。

答え贈与契約書の取り交わしと贈与税の申告はしてください

確かに振込みで贈与を行えば、通帳等に記録が残るので、金銭の移動があったという証明になります。
ですが、もしかしたらこれは、貸しているのかもしれませんし、預けているのかもしれません。
贈与契約がなぜ必要かというと、両者の意思が確認できるからだといえます。
通常、贈与は贈与を実行した瞬間に税務署の調査が入ることはめったにありません。例えば、教育費や生活費はその都度渡していれば、原則として非課税ですが、その額がすべて小さいとは限りません。この金銭の移動を、その都度、税務署がチェックして指摘するということはしません。
贈与についての指摘が行われるのは、通常、相続が発生した時点です。
この時問題になってくるのは、贈与をした人は生前、この贈与をしたことを証明してくれないということです。
もらった人が一人でその証明をするだけでは、弱いのです。この点、契約書があれば、両方の意思を示す署名や押印が有りますから、あげた方ともらった方の両方の意思を確認することができます。これは、税務署対応だけではなく、他の相続人との関係においても同様の効果があります。

次に、税金についてですが、まず、贈与した方が亡くなった場合、相続税の計算において、亡くなる年の直近3年間に行われた贈与は相続財産に含めることになっています。
これは、もう先が長くないと感じてから、対策をしたのでは遅いということになりますので、注意しておいてください。
贈与税を支払わなくていいのかどうかについて、贈与を受けた時に、贈与税を支払うのは、受贈者の義務です。但し、この義務にも時効はあります。この時効は、6年ですが、悪意があると1年伸び、7年になります。悪意とは、贈与があったことを知っているのに申告・納税を行わなかったということですから、通常8年になると考えていただいていいと思います。
ここで問題になってくるのが、時効が過ぎた贈与を、税務署が認めてくれるかということです。すなわち、名義預金とみなされてしまわないかということです。
今、税務調査があって、追徴になる資産のうち、未申告のものとして指摘される一番多いものが、この名義預金です。
名義預金とされないためには、いろいろな対策が有りますが、一番は、税務署に指摘されないようにすることです。そう考えれば、税金を事前に払っておく方が、安全です。
この点、

「一応贈与をするけど、時効を超えられなかったら相続財産に含めた方が、税率が低いから相続財産として、時効が過ぎたらその分相続財産を減らせるし、贈与税も払わなくていいから、とりあえず、財産だけ移動させておけば良い」

と考えている人がいらっしゃいます。
ですが、このような考えがあることを税務署は知っています。
特に、贈与をしても相続税が発生する人は、この指摘をされる可能性がとても高いと考えていただいていいと思います。

贈与をすれば、相続税がかからないという方に税務調査が入る可能性は、今は確かにそこまで高くありません。
今後、マイナンバー等が普及してくると、より「相続税がかからないから調査は入らないだろう」と安心しても良いかは、わかりません。

どうなるか不安で8年過ごすよりは、少しでも税金を払っておいた方が良いと思いますが、いかがでしょうか。