相続のよくある質問

質問有効で有用な遺言書が書きたい

私は50歳です。数年前に独り身のおばが無くなり、銀行口座解約等の手続きを行いました。
おばには、兄弟がたくさん居て、とっても大変でした。というのも、おばの父(私の祖父)が、何回か結婚を繰り返していたため、会ったこともない兄弟も居たからです。

私は、そこまで複雑な相続関係ではないですが、あの大変さを思うと何かあったときのために、相続人に迷惑をかけたくないという思いがあり、作成をしたいと考えています。

ですので、揉めないためというだけではなく、有効かつ手続きもスムーズにできるような遺言書にすることはできないでしょうか。

答え手続きをスムーズにするなら遺言執行者を指定しましょう

せっかく遺言書を用意したのに、この内容が実現しなかったらどうしよう・・・と不安に思う方もいるかもしれません。
また、遺言書を作成しようと考えている方は、遺産分割協議をする必要が無い、遺産分割協議書を作成する必要が無いなど、揉めない対策として考えている方が、多いと思いますが、遺言書をうまく記載すれば、その後の手続きを簡素化するという効果もあります。

色々なコツがあるのですが、そのひとつが、遺言執行者の指定です。

(1)遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言を作成した人が亡くなって相続が発生した際に、遺言書に書かれていた内容を実現する人のことを言います。
具体的には、遺産分割や不動産の名義変更、口座解約などの相続に必要な手続きをします。

絶対に遺言執行者を遺言書で指定しなくてはならない、という決まりはありませんが、遺言を作成した人が、遺言の内容や相続人の状況に応じて指定することができます。

これを指定することで、どういう違いがあるのでしょうか。

相続の主な手続きといえば、

① 戸籍類の収集
② 金融機関の解約等
③ 不動産の名義書換(相続登記)

等があります。

①でいうと、例えば、戸籍の取得は、本人又は直系の親族の分は委任状が無くても取得することができますが、結婚した兄弟の戸籍は本人か本人からの委任状を持った代理人で無ければ取得することができません。
この点、遺言執行者であれば、その指定が記載されている遺言書と取得理由を市区町村役場に説明すれば、委任状無く、取得できる場合があります(市区町村役場によって対応が異りますので、取得する市町村役場にご確認ください)。

②の不動産の名義変更は遺言書に遺言執行者が指定されていなかったとしても有効な遺言書があれば、手続きをすることは可能です。

③の預貯金の場合は、遺言書があっても遺言執行者が指定されていないと金融機関は相続人全員の署名と実印の押印、印鑑証明書の提出を求めるケースがほとんどです。その点、遺言執行者はその手続きを単独で行うことができます(金融機関によって解除の要件が違う場合もあります)。

このように、相続手続きは相続人全員で実行することが一般的ですが、相続人が複数いる場合、利害関係や物理的な要因から足並みが揃いにくくなることもあります。
また、相続税の申告が必要な方は、申告及び納税を相続が発生してから10ヵ月以内に完了させなければならないため、なるべく揉め事を避け、スムーズに手続きを進めていく必要があります。

そのような場合のために、相続人の代わりに遺言内容を実行する人を決めておくと便利です。

(2)遺言執行者を指定した方が良い場合

遺言執行者が必ず必要な場合があります。それは、①相続人の廃除及びその取り消し②認知の2つの場合です。
必ずしも必要でない場合でも、以下の様な場合には指定の要否を検討することをおすすめします。

◆相続人が、兄妹姉妹などのように多い場合
◆揉めそうな場合
◆遺贈を考えている場合
◆銀行口座が多かったり、不動産登記が必要など、手続きが多岐に渡る場合
◆寄付をする場合

(3)誰を遺言執行者に指定するか

遺言執行者は、未成年、破産者を除けば基本的に誰でもなることができます。また、法人(信託銀行や弁護士法人など)であっても構いません。相続人や受遺者でもなることはできますが、遺言執行者は利害関係が複雑にからむことが多く、財産の分割内容によっては相続人間で揉めごとになり、手続きがスムーズに進まないなどといった事例もよくあります。

不動産を有している場合は、司法書士を選任することが多く、裁判などに発展する可能性が高い場合は、弁護士を選任することが多いようです。
また、遺言執行者の指定自体を○○にお願いするという遺言を書くこともできます。