相続のよくある質問

質問相続登記に期限はありますか

相続で不動産を取得しました。人が亡くなるといろいろやることがあり、頭が混乱しますが、登記は、いつまでにしなければならないのでしょうか。

答え相続登記に期限はありません

相続で受取った不動産の名義変更をすること、相続登記には、期限はありません。
ですが、登記をしないで放置することで、ご自身の家族で混乱が生じたり、迷惑をかけたり、場合によっては、地域の皆さんに迷惑をかけることになります。

相続登記をしない主なデメリット
(1) 権利関係が複雑化する
(2) 売却や担保設定をしたいと思ったときに時間と労力がかかる
(3) 書類の取得が困難で登記に時間がかかる
(4) 共有者の一人に借金がある場合、差し押さえられてしまう可能性がある
(5) 震災等があった時に整備等ができない
(6) 震災等があった時に不動産賠償が受けられない

(1) 権利関係が複雑化する

名義人が亡くなった瞬間から名義を書き換えるまでは、事実上その不動産は相続人全員の共有状態になります。
そしてそのうちの誰かが亡くなると、その所有権利はそのまま亡くなった人の相続人に相続されます。

名義人が亡くなった時点では相続人は数人という場合でも、例えば、3世代前のまま登記がされていないと、現時点では20人を超えてくるということは、よくあることです。
もしこの状態で特定の相続人の名義に不動産登記をする場合、この共有者全員が所有権を持っているため、全員の同意と書類が必要になります。1人でも同意してくれない人がいると登記ができません。

また、子供だけならまだしも、亡くなった相続人の妻まで含まれていると、権利関係はさらに複雑化します。
これだけ人数がいると、中には会ったことも話したこともない人がいてもおかしくありませんし、そのような人から同意を得るのはなかなか難しいですよね。

登記をしていない期間が長ければ長いほど相続人は増えて複雑化し、同意を得るのが大変になっていきますので注意が必要です。

(2) 売却や担保設定をしたいと思ったときに時間と労力がかかる

売却や担保設定は亡くなった人の名義の不動産ではできませんので、遺産分割協議等をして不動産の所有者を確定する必要が有ります。共有者の一人が行方不明であったり、認知症になってしまったりするとその方々の同意が取れません。

このようなことを、将来的に考えているということであれば、できれば共有にせずに相続登記をすることをお勧めいたします。

行方不明者がいる場合には、まずは家族で探し始めると思いますが、どこにいるかわからなかった場合には、家庭裁判所の許可を得て不在者財産管理人を立てたり、失踪宣告などが必要になります。

また、認知症の方がいる場合には、成年後見人を申立てる等の手続きが必要になります。

(3) 書類の取得が困難で登記に時間がかかる

役所は、亡くなった人の住民票の除票なら5年、戸籍なら50年もしくは80年間、保存することが義務づけられています。期限を過ぎてしまうと役所で亡くなった人の書類を取得することができなくなってしまう可能性があるということです。

今は、データで保存されていることがほとんどですから、5年の保存期間が過ぎたら直ちに消去ということはなく、結構前のものでも取得できますが、さすがに15年や20年前のものだと取得が難しいかもしれません。

(4) 共有者の一人に借金がある場合、差し押さえられてしまう可能性がある

相続人の一人に借金があって、返済が滞っている際に、その債権者が判決などに基づいて相続財産を差し押さえる場合があります。

この場合、債権者は、相続人の法定相続分を差し押さえることができるので、勝手に法定相続分の相続登記をしてから、債務者(共同相続人の1人)の持分について差押え登記をすることができます。

つまり、誰も知らない第三者が相続人として所有権を得ることになり、もし売られてしまった場合、その不動産は買い手との共有名義となってしまうのです。

(5) 震災等があった時に整備等ができない

東日本大震災の際、とても困ったのが、土地の持ち主がわからず、整備等が滞ってしまうということでした。

熊本地震でも同じようなことが起こってきています。道が寸断されている場合に、他の道を通して救援物資などを届けたいのですが、通りたい道の所有者がわからず、ただでさえ遠回りをしないといけない上に、より遠くなってしまうということが起こってしまいます。

いざというときのためにも、相続が起こった際には、その都度、登記をしておいて欲しいと思います。

(6) 震災等があった時に不動産賠償が受けられない

不動産賠償とは、事故や契約違反、不法行為などにより不動産が受けた損害を、金銭などで補てんすることをいいます。

不動産賠償は本来、実際に住んでいる人に対して行うものですが、対象者全てのそれを特定することは難しい場合があるため、原則として登記上の名義人に対して行われます。

東日本大震災で原発事故により自宅に住めなくなった人に対して東京電力が不動産賠償を行おうとしましたが、相続登記されていないがために賠償が行えない、というケースも報告されていました。

 

相続登記には、期限はありませんが、登記をしないで放置することで、上記のように、ご自身の家族で混乱が生じたり、迷惑をかけたり、場合によっては、地域の皆さんに迷惑をかけることになりますので、相続が起こった際には、速やかに登記をすることをお勧めします。