相続のよくある質問

質問認知症の方との遺産分割協議はどうするの?

先月父が亡くなり、相続人は母、私(長男)、長女、次男の4人です。
父の遺産分割協議をしたいのですが、母が認知症のため意思能力がありません。
このままだと申告期限までに遺産分割ができず困っています。

答え後見人が遺産分割協議をします

この場合、「法定後見制度」を利用してお母様に後見人をつけることでお父様の遺産分割協議ができるようになります。

法定後見制度とは「成年後見制度」のうちの1つで、認知症や精神障害などによって判断能力が不十分な方々が不利益を受けないために、家庭裁判所に申請してその方々を保護または支援してくれる人(成年後見人)を付ける制度です。
その中でも法定後見制度は既に判断能力が低下している場合に行うもので、その症状の重さによって「後見(重度)」「保佐(中度)」「補助(軽度)」という種類に分かれています。

また、成年後見人が仕事を怠ったり不正をしたりしていないかをチェックするために、「後見監督人」という人が選出される場合があります。

成年後見人ができることは次のような行為です。
・財産管理業務…金融機関との取引、不動産売買、年金受給、保険金請求、遺産分割協議の参加など
・身の回りの契約行為…入院手続き、医療費の支払い、介護サービス契約、施設への入所契約など
・身の回りの諸手続き…郵便物の管理、確定申告、身体障害者手帳の交付請求手続きなど

ただし、一度法定後見制度を始めると、本人の判断能力が回復するか本人が死亡するまでこの制度は続きます。
そして誰が後見人になるか及びその後見人への報酬は、家庭裁判所が決めることですので、必ずしも相続人の希望が通るとは限りません。

希望しない人が後見人に選出されたからといって申請を取り下げたりすることはできませんので、申請する時は周りの人とよく話し合って計画的に行いましょう。

この方の場合ですとお母様が認知症のため、そのままでは本人の意思能力が認められません。
意思能力が認められないまま遺産分割協議をしてしまうとお母様が不利益を被る可能性があるため、お母様の権利をきちんと守るという意味で後見人が代わりに遺産分割協議をすることになります。

法定後見制度は申請してから実際に活用できるようになるまでに大体2ヶ月かかると言われています。

相続税の申告期限は亡くなってから10ヶ月ですので、法定後見制度を申請する→後見人が参加して遺産分割協議をする→相続税申告をして相続税を支払う という作業を行うには早めに後見制度の申請をしなければ相続税申告の期限が過ぎてしまう可能性があります。
もし相続が発生して相続人の中に認知症の方がいた場合、家庭裁判所に法定後見制度を申請してすみやかに後見人を選出してもらいましょう。