相続のよくある質問

質問主な遺産は不動産1つ・相続人は3人 どういうわけ方が良い?

私も、70代になり、子供たちにどういう風に相続させるのが良いのかと考えるようになりました。
財産は、不動産が1つ(評価額は5,000万円程度)と預金が4,000万円ぐらいです。

不動産は長男に受け継いでもらいたいと思っているのですが、そうすると他の二人が2,000万円ずつになってしまい、不公平だと思うのです。
なるべく兄弟は仲良く、揉めることはないようにしてもらいたいと思っているのですが、なにかよいアドバイスはありませんか。

答え代償分割という方法をとってはいかがでしょうか

遺産(相続財産)が、不動産など分けにくいものである場合は、代償分割という方法はいかがでしょうか。

代償分割とは、特定の相続人が財産を相続する代わりに、他の相続人に金銭や自分の所有する他の財産を渡す方法です。
それによって全員が納得しづらい分割をスムーズにしたり、将来、揉めるリスクを減らすことができます。

ここで、不動産を共有名義にするという方法もあります。ですが、もし、不動産を共有名義にしてしまうと、例えばその不動産を売却したり担保設定する際に、名義人全員の同意がなければできません。
共有名義にした時点では、兄弟の仲は良かったけれど、結婚をしたり、子供や孫がいる兄弟といない兄弟がいる等、時代の変化とともに、それぞれの状況が変わってきて、当時は揉める要素はなかったのに今は揉める要素しかないと言うのは、良く聞く話です。

ですから将来、その不動産をどうしたいかで名義人同士で揉める可能性が高くなります。

この点、誰か1人が不動産を相続して単独名義にして差額分を他の相続人へお金として支払えば、共有名義の問題を回避しつつ相続人全員が納得いくような遺産分割ができやすくなります。

では、代償分割とは、具体的にどういう仕組みになるのでしょうか。

(1)代償金を相続人に任せる場合

(例) 推定相続人:長男、次男、長女
現時点の財産:9,000万円(不動産5,000万円、預金4,000万円)

図2

①9,000万円÷3人=3,000万円
②3,000万円-2,000万円=1,000万円(次男の不足分)
③3,000万円-2,000万円=1,000万円(長女の不足分)

したがって、長男は次男と長女にそれぞれ1,000万円ずつを代償金として支払えば3人で平等に相続できます。

ところが、この場合、長男は計2,000万円の現金を用意しなくてはいけません。
2,000万円もの金額を自分で用意しなくてはいけないとなると、長男にとっては大きな負担ですよね。

そこで、生命保険を使った生前対策をしておくことで負担を無くす(軽くする)ことができます。

(2)代償金を事前に用意する場合

下の図をご覧下さい。

図3

まず預貯金の一部を使って、被相続人が生命保険に加入します。
生命保険の内容は、契約者が被相続人、被保険者が被相続人、受取人が代償金を支払う人(代償金を受け取る人ではないので注意してください)になるようにしておきます。

そして被相続人が亡くなった時、受取人に生命保険金が支払われます。

ここで重要なのが、生命保険金は受取人固有の財産ですので遺産分割協議の対象にはならないということです。

したがって、計算例は次のようになります。

(例) 相続人:長男、次男、長女
遺産:6,000万円(不動産5,000万円、預金1,000万円)
その他:生命保険3,000万円(受取人は長男)

①6,000万円÷3人=2,000万円
②2,000万円-0円=2,000万円(次男不足分)
③2,000万円-1,000万円=1,000円(長女不足分)

この場合、長男は代償金として現金3,000万円を用意しなくてはいけませんが、生命保険金として受け取った3,000万円で支払うことができますので自分でお金を用意する必要はありません。

それぞれの受取額は、減少してしまいますが、長男が代償金を用意できない場合等は、争いにならないためにもこのような対策が有効です。
あらかじめ代償分割になりそうだなと分かっている時は、生前にこのような対策をしておくのもよいでしょう。

注意点

代償分割を利用して他の相続人にお金などを渡す場合は、必ず「代償金として△△に○○(代償の金額や名前)を支払う」という旨を遺言書や遺産分割協議書に記載しましょう。

記載しないまま渡してしまうとそれは単純な贈与とみなされ、贈与税が発生してしまいます。

例えば2,000万円もの代償金を遺産分割協議書等に記載せずに渡してしまうと695万円の贈与税が発生してしまいますので注意しましょう。